風評被害という言葉は日常的に使われていますが、法律上の条文に直接「風評被害罪」という文言が存在するわけではありません。実務上は、「事実無根の噂、あるいは科学的・合理的な根拠を欠く誤認情報が世間に広まることで、対象となった個人や企業、地域が経済的不利益や信用失墜を被る事態」と解釈されます。
混同されやすい言葉に「誹謗中傷」があります。両者の決定的な相違点は、攻撃の「矛先」と発生する「結果の性質」です。誹謗中傷は、特定の人物に対する「バカ」「消えろ」といった人格攻撃や根拠のない悪口そのものを指し、個人の尊厳や感情を傷つける行為(侮辱罪や名誉毀損罪の対象)に重きが置かれます。一方、風評被害の中核にあるのは「経済的・二次的損害の発生」です。「あの店の料理に毒が入っている」「あの会社は不正を働いて倒産寸前だ」といった情報が広がり、客足の途絶や取引停止といった客観的な不利益が生じる点が最大の特徴と言えます。
風評被害に該当するか否かを客観的に見極める基準としては、主に以下の3つの要素が挙げられます。
- 情報の正確性:発信・拡散されている情報が客観的真実に反しているか、または著しい誇張・ミスリードを含んでいるか。
- 評価の波及度:特定の閉じたコミュニティ内にとどまらず、不特定多数の目に触れ、世論や市場の評価を歪めているか。
- 実質的な損失の発生:売上の急減、契約破棄、採用活動の破綻、地価の下落など、目に見える不利益が直接的・間接的に発生しているか。
刑事責任の観点では、虚偽の風説を流布したり偽計を用いたりして人の信用を毀損した場合は刑法233条の「信用毀損罪」、業務を妨害した場合は同条の「業務妨害罪」が適用され、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されます。