二人の接点を語る上で外せない人物が、幕臣の勝海舟である。神戸海軍操練所で龍馬に航海術と世界情勢を教え込んだ勝は、西郷に対しても深い敬意を抱いていた。勝海舟という卓越した触媒を介して出会った二人は、初対面から互いの器量を瞬時に見抜く。「小さく叩けば小さく響き、大きく叩けば大きく響く」と龍馬が評した西郷のスケール感。一方の西郷もまた、身分制度の枠組みを軽々と飛び越える龍馬の規格外な発想に目を奪われた。
当時、薩摩藩は強硬な軍備拡張と幕府との政治的対立で孤立の危機に瀕していた。藩政を牛耳る指導層にとって、勝海舟の門下生たちを抱え込むことは、近代海軍の技術を丸ごと手に入れる絶好の好機だった。西郷は藩の資金を投じて彼らを保護し、その受け皿を作った。国家の行く末を見据える大局観と、藩の権益を死守するプラグマティズムが、勝海舟の引いた見えないレールの上で見事に交差した瞬間である。