近年、国内外からの観光客が急増するなかで、奈良公園の現場では深刻なマナー違反やトラブルが後を絶ちません。現場の観察と愛護会の啓発活動から見えてくる、代表的な3つのリスク要因を取り上げます。
1. プラスチック・ゴミの誤飲事故
鹿は草食動物であり、主食は芝生(ノシバ)や樹木の葉、ドングリなどです。しかし、観光客が持ち歩くレジ袋やスナック菓子の包装紙から漂う匂いに引き寄せられ、誤ってプラスチックゴミを丸呑みしてしまう事故が多発しています。過去の解剖調査では、衰弱死した鹿の胃の中から数キログラムに及ぶ硬化したビニール塊やゴミの塊が見つかった事例が多数報告されています。奈良公園内では「ゴミは必ず持ち帰る」「レジ袋をぶら下げて歩かない」が絶対の鉄則です。
2. 人間の食べ物の給餌による健康被害
パン、スナック菓子、野菜くず、おにぎりなどを「鹿が欲しがったから」と与えてしまう行為は極めて危険です。人間の加工食品に含まれる過剰な塩分、油分、糖分、保存料は、鹿の繊細な反芻胃のバクテリアバランスを破壊し、下痢や重度の消化不良を引き起こします。奈良公園で鹿に与えてよいエサは、成分が安全管理されている「鹿せんべい」のみです。
3. 自撮り(セルフィー)撮影時の接触事故
SNSへの投稿を目的として、鹿の顔のすぐ横に自分の顔を近づけてインカメラで撮影しようとする行為は非常に危険です。鹿が突然顔を振った際に角や頭骨が直撃して顔面を負傷したり、背後から急に太ももを噛まれたりする事故が相次いでいます。撮影する際はズーム機能を活用し、鹿のパーソナルスペースを侵さない距離を確保することが鉄則です。