「もつの下茹では本当に必要なのか?」という疑問を抱く方は少なくありません。結論から言えば、もつ下茹でと臭み取りの工程を省いて極上の料理を作ることは極めて困難です。その決定的な理由は、ホルモン特有の脂質と分泌物にあります。
内臓肉は筋肉部位に比べて毛細血管や消化液の痕跡が多く、空気に触れることで脂質が急速に酸化します。この酸化した脂やドリップに含まれるアミン類や低級脂肪酸こそが、鼻をつく「獣臭・生臭さ」の正体です。熱湯を通すことで、これらの臭気成分が溶け出した余分な脂とともに体外へ排出され、調味料がしっかりと染み込む下地が整います。
下処理の現場で欠かせないのが、牛もつ下処理におけるネギ・生姜・もつ下茹で時のお酒の組み合わせです。長ネギの青い部分に含まれる硫化アリルや生姜のジンゲロールは、肉の臭気成分と結合して不快臭をマスキングします。さらに、日本酒に含まれるアルコールが揮発する際、臭み成分を抱き込んで一緒に蒸発させる「共沸効果」が働き、劇的な消臭効果を発揮します。