新国劇の舞台で培われた確かな演技力と殺陣の鋭さは、NHK大河ドラマ『太閤記』の豊臣秀吉役で一躍全国的な人気を確立させた。しかし、スクリーンにおける「緒形」の真骨頂は、人間の醜悪さや業を泥臭く剥ぎ取るようなリアリズムにあった。今村昌平監督の『復讐するは我にあり』で見せた連続殺人鬼・榎津厳役は、邦画史における犯罪者描写の金字塔として、今なお国内外の映画監督に多大な影響を与え続けている。
善人から冷酷な悪党、さらには悲哀に満ちた小市民まで、演じる役柄の幅広さは群を抜いていた。『楢山節考』でのカンヌ国際映画祭パルムドール受賞、深作欣二監督の『魔界転生』や『必殺仕置人』の藤枝梅安役など、作品ごとにまったく異なる顔を見せる変化自在の表現力は、当時の観客の度肝を抜き続けた。