仲代達矢主宰の俳優養成所「無名塾」。徹底したリアリズムと過酷な稽古で知られるこの名門の門を叩き、才能を開花させた田中実さんの役者人生は、常に真摯な情熱に満ちていた。何百倍もの難関を突破して塾生となった彼は、舞台で叩き上げた揺るぎない基礎を武器に、瞬く間に映像の世界へと進出していく。
その名を全国区へと押し上げたのが、1990年に放送されたNHK連続テレビ小説『凛凛と』だ。主人公・畠山幸吉役を瑞々しく演じきり、朝の顔として日本中のお茶の間に爽やかな感動を届けた。ひたむきで真っ直ぐな青年の姿は、田中さん本人の人柄そのものと重なり合い、視聴者の心を強く揺さぶった。
無名塾時代から培われた演技への厳格な姿勢は、生涯変わることがなかった。役作りに対するストイックな探求心と、現場で見せる共演者やスタッフへの細やかな気配り。その両輪があったからこそ、彼は急速にスターダムを駆け上がっていったのだ。