阪本順治監督によるモノクロ映画『せかいのおきく』で見せた下肥買いの青年・中次役もまた、彼の底知れぬポテンシャルを証明した。江戸の最底辺で生きる若者の貧しさ、生命力、そして言葉を交わさずとも通い合う純情。汚穢にまみれながら笑う寛一郎の表情には、観る者の胸を締め付けるほどの無垢な輝きが宿っていた。
美しさを競うのではなく、人間の生々しい営みや愚かさを丸ごと引き受ける覚悟。スマートで無難な演技が重宝されがちな現代において、寛一郎が選ぶ役柄は常に汗と土の匂いがする。泥にまみれることを恐れない姿勢が、日本映画界における彼の立ち位置を確固たるものにしている。