『消えたママ友』と『妻が口をきいてくれません』での高い評価を受け、野原は第25回手塚治虫文化賞短編賞を受賞した。コミックエッセイのフォーマットから出発した作家が、人間心理の暗部を抉り出す第一級のヒューマンドラマの担い手として漫画界の権威から認められた瞬間だった。
KADOKAWAから刊行された『今朝もあの子の夢を見た』をはじめとする後続作品でも、その研ぎ澄まされた人間観察は遺憾なく発揮されている。男と女、親と子、加害者と被害者という単純な二項対立に還元しない丁寧な描写は、読み終えたあとも胸の奥にざらりとした感触を残す。その違和感こそが、読者に現実の人間関係を問い直す契機を与えているのだ。