「駅前にあるから立ち寄りやすい」という利便性が、皮肉にも多くの利用者に初歩的な誤解を生んでいます。名古屋駅前公証役場で遺言公正証書や離婚給付等契約公正証書、あるいは会社設立のための定款認証を希望する場合、事前予約なしの当日の飛び込み相談・即日作成は原則不可能です。
これには法制度上の構造的な理由が存在します。公証人が扱う「公正証書」は、裁判所の確定判決と同等の強制執行力(債務名義)を持たせることができる極めて効力の強い法的文書です。そのため、公証人法および関係規則に基づき、以下のプロセスを踏むことが義務付けられています。
第一に、嘱託人(依頼者)双方の法的な意思能力や真意の確認、本人確認資料の綿密な精査です。第二に、公証人が民法や会社法に照らし合わせて事前に文案を作成・推敲し、法令違反や将来の紛争要因がないかを検証する起案期間が必要となります。第三に、作成日当日は関係者全員(遺言の場合は証人2名を含む)が公証役場に揃い、公証人が文案を読み聞かせて署名捺印を行う専用の面談時間を確保しなければなりません。
窓口業務を観察すると、予約なしで訪れた来訪者が受付で「本日の公証人の予定は終日埋まっており、事前の文案確認もできていないため対応できません」と告げられ、呆然と立ち去る場面が珍しくありません。唯一、予約なしで即日処理が可能なのは私書証書に対する確定日付の請求手続きなどごく一部の簡易事務に限られます。権利関係を確定させる公正証書を作成したいのであれば、最初のステップとして「電話または公式メール等による事前連絡とドラフト送付」が絶対条件です。