「会見場の控室に入った時点で、大臣の意識は明らかに朦朧としていた」。当時、現地に派遣されていた政府関係者は重い口を開いた。現場では歩行もおぼつかない状態でありながら、なぜカメラの前に立たせてしまったのか。そこには「会見をキャンセルすれば各国の市場に金融不安の誤ったシグナルを送ってしまう」という、官僚組織特有の過剰な忖度と硬直した判断があった。
さらに見過ごされてきたのが、同行医師の不在と服薬管理の杜撰さだ。激しい腰痛と風邪の症状を抑えるため、複数の強力な薬剤を併用していた事実を一部の記者クラブ幹部は把握していた。しかし、ひとたび火がついた政治スキャンダルの奔流を前に、肉体的・医学的背景を冷静に検証する視点はかき消された。滑舌の崩壊した数秒のクリップばかりがループ再生され、記者会見の場は政策の発表場所から人間性を断罪する公開処刑場へと変貌を遂げた。