事業仕分けが科学界に与えたショックは計り知れないものでした。スパコン事業に対する「事実上の凍結(予算大幅削減)」の判定を受け、ノーベル賞受賞者である野依良治氏や利根川進氏、数学者のフィールズ賞受賞者・森重文氏らが緊急共同記者会見を開催。「国家の百年の計を損なう」「歴史の法廷に立つ覚悟はあるのか」と、感情を露わにして政府を痛烈に告発しました。
世論の反発と科学界の危機感を受け、最終的にスパコン予算は一部復活。後のスーパーコンピュータ「京」は2011年に世界計算速度ランキング「TOP500」で世界第1位を達成し、後継機の「富岳」へと技術が引き継がれました。しかし、現場へのダメージはスパコンにとどまりませんでした。
仕分けの矛先は、若手研究者の育成枠や国立大学の運営費交付金、基礎科学研究の各種競争的資金にまで及びました。一連の科学技術予算削減の嵐は、日本の研究現場に「短期的な成果が出ない研究は切り捨てられる」という強い萎縮効果を植え付けました。優秀な若手研究者がポストを失って海外へ流出する頭脳流出(ブレイン・ドレイン)が加速し、研究機関の研究力低下を招いた要因の一つとして、現在でも学術関係者から重い爪痕が指摘され続けています。