みかんを食べる前によく耳にする「手で揉むと甘くなる」という説。単なる迷信と捉えられがちですが、これには農学的な裏付けが存在します。
みかんには元々、果実が活動を維持するための「呼吸」が行われています。手で適度に揉んで物理的な刺激や微弱なストレスを与えると、果実の細胞は傷を修復しようと呼吸を活性化させます。この代謝プロセスにおいて優先的に消費されるのが、果汁の中に含まれる「クエン酸(酸味成分)」です。果汁内の絶対的な糖分が増えるわけではありませんが、酸味が分解されて減少することにより、糖酸比のバランスが糖優位へと傾き、人間の舌は「甘くなった」と知覚するのです。
ただし、ここには明確な盲点があります。揉みすぎると細胞膜が破壊され、果肉から果汁が過剰に漏れ出して水っぽい口当たりになってしまいます。また、ヘタ側を強く圧迫すると前述の油胞が果肉に染み込んでしまうため、みかんの簡単な剥き方を実践する前に行う揉みほぐしは、「手のひらで2〜3回軽く転がす程度」に留めるのが鉄則です。