美空ひばりの『みだれ髪』を聴く者の耳を捉えて離さないのは、寄せては返す太平洋の怒濤と、揺れ動く女性心理が完璧なまでにシンクロした文学性の高い詞世界です。舞台となったのは、福島県いわき市平薄磯に位置する塩屋岬(塩屋埼)。海抜約73メートルの断崖絶壁に白亜の塩屋崎灯台がそびえ立つこの地は、古くから海上交通の難所として知られ、荒涼とした自然の厳しさを肌で感じる景勝地です。
1番の歌い出しである「髪の乱れに やすらぐ心 微笑み返して ついて行く」という一節には、深いみだれ髪の歌詞の意味が凝縮されています。激しい海風に黒髪を乱されながらも、むしろその乱れの中に心の安寧を見出す――そこには、世間の荒波に揉まれ、傷つき尽くした女性が、愛する人への思慕だけを頼りに生きようとする悲痛な覚悟が滲み出ています。
続く2番の「塩屋岬の 沖行く船は どこへ帰るの 鳥の群れ」では、過酷な北の海を進む孤独な船と自分自身の境遇が対比され、3番のクライマックス「春は二重に 罪つくり 捨てたはずの 恋なのに」へと感情が激しく波打ちます。みだれ髪の歌詞解釈において極めて重要なのは、単なる失恋の未練を描くにとどまらず、諦めきれない情念を「罪」と呼びながらも受け入れる人間の業(ごう)を描ききっている点です。塩屋岬の寒風と白波の飛沫が、主人公の張り裂けそうな内面を鮮烈に視覚化させています。