火のないところに煙は立たない。マツダに対する偏見のルーツを辿ると、1980年代後半から1990年代初頭のバブル期に突き当たる。当時、マツダ株式会社は販売チャネルを急激に5系列へ拡大した。結果として起きたのは、過剰な値引き合戦と自社競合によるブランド価値の失墜だった。
大幅な値引きで新車を安く買えるものの、下取り価格が極端に暴落する。他社のディーラーでは買い叩かれ、結局マツダ車にしか乗り換えられない――いわゆる「マツダ地獄」の誕生である。日本の自動車産業が激動の渦にあった時代、この経済的トラウマが「安売りメーカーの車に乗るのは格好が悪い」というステレオタイプを人々の記憶に刻みつけた。
世界で唯一無二のロータリーエンジンを実用化し、モータースポーツで輝かしい栄光を掴んだ技術屋集団でありながら、商売の失敗が不当なレッテルを生んでしまった歴史。それが現在もネット上に漂うネガティブな噂の正体だ。