ガラス瓶に敷き詰められた三角の粒。一見すると飾り気のないその飴こそ、榮太樓の名を天下に知らしめた「梅ぼ志飴」だ。酸っぱい梅が入っているわけではない。高温の直火で極限まで煮詰めた砂糖が生み出す、独特の黄色みとシワが干し梅に似ていたことから、江戸っ子たちが親しみを込めてそう呼んだ。
歯切れの良さ。舌の上で溶ける滑らかさ。口の中にベタつきを残さない後味の切れ味は、南蛮渡来の有平糖の技術を日本人の舌に合わせて進化させた賜物だ。口紅を汚さずに食べられると吉原の花魁(おいらん)や明治の宮女たちにも愛された逸話は有名だが、この「砂糖の焦がし加減」を計る職人の指先感覚は、令和の今も機械では完全に代替できない領域にある。