料理番組やネット動画でよく見かける「卵焼きは強火で手早く一気に焼き上げるのが正解」という言説。これは出汁の水分量が極めて多い「関西風だし巻き卵」にのみ当てはまるテクニックであり、甘い卵焼きにおいては最大の落とし穴となります。
だし巻き卵は、出汁の蒸発圧力を利用して気泡を含ませるため強火短時間が求められますが、砂糖やみりんを多く含む卵液を強火にかけると、中心部に火が通る前に外側だけがキャラメル状に焦げ固まります。結果として、中は生焼け、外は炭化という最悪の状態に陥ります。
また、「卵白を完全に白身が見えなくなるまで泡立て器で混ぜる」というのも一般的な誤解の一つです。白身を細かく泡立てすぎると、気泡が加熱時に膨張して表面がボコボコになり、冷めたときに大きく萎んでパサつきの原因になります。箸を底につけたまま左右に直線的に切り、白身のコシを8割程度ほぐす「切るように混ぜる」状態が、滑らかな舌触りを生み出す最適解です。