吹奏楽部に入部したばかりの中高生や市民吹奏楽団の復帰組から寄せられる相談の中で、圧倒的に多いトラブルが「指示された音と違う音を吹いてしまう」という現象です。SNSや知恵袋の投稿データ、指導者への取材から見えてきた典型的な落とし穴を検証します。
1. 「B(ベー)」と「H(ハー)」の致命的な混同
英語圏では「B=シ」ですが、ドイツ音名では「H(ハー)=シ(ナチュラルの音)」であり、「B(ベー)=シ♭」を指します。指導者が「実音のベーを出して」と言った場合、ピアノの「シ♭」を意味します。ここで英語式の「シ」を出してしまうと、半音の不協和音が発生してしまいます。
2. チューニング時の「実音B♭」とクラリネット運指の食い違い
合奏前のチューニングで「B♭(ベー)で合わせます」と言われた際、クラリネット奏者が押さえるべき指は楽譜上の「レ(D:デー)」または「ド(C:ツェー)」のオクターブです。一般的には中音域の「記譜音C(実音B♭)」またはチューニング用として響きが安定しやすい「記譜音C(第3間のド)」を用います。「ベーと言われたから」と楽譜のシ♭(B)を押さえてしまうと、実音A♭(アス)が鳴ってしまい音程が全く合いません。
3. 変化記号(シャープ・フラット)の読み間違い
ドイツ音名では、半音上がるときに接尾辞「-is(イス)」、半音下がるときに「-es(エス)」を付けます。
- シャープ(♯):Cis(ツィス)、Dis(ディス)、Fis(フィス)、Gis(ギス)、Ais(アイス)
- フラット(♭):Ces(ツェス)、Des(デス)、Es(エス)、Fes(フェス)、Ges(ゲス)、As(アス)、B(ベー ※Besとは言わない)
特に「A(アー)のフラット」は「Aes」ではなく「As(アス)」、「E(エー)のフラット」は「Es(エス)」と短縮される点は試験や現場指示で頻出するポイントです。