駒場公園の敷地中枢に君臨する旧前田家本邸。スクラッチタイルと白州産砂岩で覆われた外壁は、見る角度によって劇的にその表情を変える。正面玄関の車寄せから一歩足を踏み入れると、高い格天井とマントルピース、そして繊細なステンドグラスから差し込む柔らかな光に来訪者は息をのむ。
関係者への聞き取りによると、邸内には一般の観光ルートでは見落とされがちな意匠が随所に潜んでいる。例えば、かつて晩餐会が開かれた大食堂の壁面を飾る細工や、当主の書斎に隠された通風換気システムなど、当時最高峰の設備技術が惜しみなく注ぎ込まれていた。四季の光線によってステンドグラスが床に落とす陰影の角度が変わり、春の柔らかな日差しと秋の鋭い斜光では空間全体の色彩設計が一変する点も、リピーターを惹きつけてやまない理由の一つだ。