身近な神社を巡る醍醐味は、土地の歴史レイヤーを剥がしていく知的な冒険でもある。学問の神として親しまれる菅原道真を祀る天満宮は全国に点在し、受験生のみならず日々の自己研鑽に励むビジネスパーソンの心の拠り所となってきた。非業の死を遂げた怨霊を神として祀り上げることでその力を恵みへと転化させる「御霊信仰」の系譜は、日本人の精神史そのものだ。
一方、江戸幕府を開いた徳川家康を神格化した東照宮のネットワークは、都市計画と防衛の要所に配置された。神社神道は単一の教典を持たず、自然崇拝と祖先祭祀、そして為政者の祈りが幾重にも折り重なって形成されている。身近な境内の一角に建つ石碑の文字を読むだけで、数百年前の武将の思惑や庶民の切実な祈りが鮮明に浮かび上がってくる。