日本整形外科学会の統計や臨床現場の追跡調査によると、60代の約20%、70代の約30%以上に無症候性を含めた腱板断裂が存在すると報告されています。しかし、医療機関を受診した患者の手記やコミュニティにおける当事者の声を精査すると、発症初期の誤認がいかに回復を遅らせているかが浮き彫りになります。
大手Q&Aサイトや医療相談プラットフォームに寄せられた「半年間、五十肩だと思って自己流の強いマッサージや鉄棒ぶら下がり運動を続けていたら、激痛で腕が全く上がらなくなり、MRIを撮ったら棘上筋腱が完全に切れていた」という複数の悲痛な告白は、決して例外的なケースではありません。
腱板断裂は、皮膚の切り傷のように「時間が経てば勝手にくっつく」組織ではありません。断裂した筋肉はゴムのように肩甲骨側へと引き込まれ、放置期間が長引くほど断裂端が退縮し、筋肉組織が脂肪に置き換わる「脂肪変性」を起こします。一度高度な脂肪変性に陥った筋肉は、仮に後から手術で縫合したとしても筋力が元に戻りにくくなります。「痛いけれど何とか動かせるから」という我慢が、かえって将来的な関節機能の喪失を招く実態を直視しなければなりません。