海喜館事件の最も異様な展開は、被害発覚後の経営トップ陣による壮絶な内紛である。当時、経営の最高責任者であった和田勇会長は、問題案件の決済を強行した阿部俊則社長(当時)の経営責任を厳しく追及し、取締役会での社長解任を画策した。
だが、2018年1月の取締役会で起きたのは、誰もが予想しなかった逆クーデターだった。阿部氏を中心とする派閥が水面下で取締役の多数派工作を完了させており、逆に和田会長の解任動議を提出。審議の結果、責任を取らされるはずだった阿部社長側が実権を握り続け、追及側だった和田会長が辞任へと追い込まれるという劇的な失脚劇が起きた。詐欺の被害責任よりも社内政治の力学が優先されたこの結末は、ガバナンスの崩壊として経済界に強い衝撃を与えた。