大衆文化における方言の描かれ方も、この二重構造を巧みに反映してきた。スタジオジブリのアニメーション映画『コクリコ坂から』では、1963年の横浜を舞台に爽やかな青春群像が描かれ、当時の港町特有の口調がノスタルジックに彩られる。ここでの言葉遣いは、都市的でハイカラな文化の象徴としての「じゃん」だ。
対照的なのが、東海地方の局所的なカルチャーを徹底的に弄り倒した人気作『八十亀ちゃんかんさつにっき』である。作中では、名古屋弁の影に隠れがちな三河弁の「じゃん・だら・りん」のリズムが生き生きと描かれ、愛知県民や静岡県民にとっての「じゃんね」が、決して横浜からの借り物ではなく、骨の髄まで染み付いた土着言語であることが強調される。
メディアが消費する「洗練された横浜のじゃん」と、地方の生活に根ざした「土着のじゃんね」。両者のギャップは、ポップカルチャーを通じて再生産され、時にコミカルな対立構図を生み出し続けている。