音響工学の理論が示している通り、人間が音の方向や距離を感じ取るメカニズムは、両耳に届く音の「時間差(ITD)」と「音圧差(ILD)」に依存している。イヤホンの左右が逆になると、脳が処理する音響空間の情報と視覚情報の整合性が取れなくなり、深刻な脳の混乱や聴覚的ストレスを引き起こす。
ソニーグループ株式会社をはじめとする最先端のオーディオメーカーが開発を進める最新リスニング環境では、原音を極めて高精度に再現するハイレゾオーディオの真価を発揮させるため、精密な位相制御が行われている。ヴォーカルが中央に立ち、ドラムのハイハットが右奥で刻まれ、ベースが足元を支えるといった明確な「音像の定位」は、左右を正しく装着して初めて完結するアートなのだ。
わずか1センチに満たない小さなイヤホンユニットだが、そこに組み込まれた音響工学的アプローチは膨大だ。正しい装着は、アーティストやエンジニアがスタジオで創り上げた情熱をそのまま受け取るための最低条件と言える。