「I'll be there」というタイトルを冠した楽曲は、音楽史において複数の金字塔を生み出してきました。オリジナルを忠実に昇華させた名演から、同名異曲として独自の世界観を築いた現代のヒット曲まで、その音楽的アプローチは多岐にわたります。
1992年、マライア・キャリーは『MTV Unplugged』の特番収録において、予定外の選曲としてジャクソン5の「I'll Be There」をトレイ・ロレンツ(Trey Lorenz)とのデュエットで披露しました。リハーサル不足の懸念を跳ね返し、マライアの超絶的なホイッスルボイスとトレイの高音ハーモニーが見事に融合したこのライブ音源は、シングル化されるや否や全米ビルボードチャート1位を記録。グラミー賞にもノミネートされ、カバーソングの歴史における最高峰の一つとして語り継がれています。
一方で、日本のポップスシーンにおける決定打となったのが、嵐が2017年に発表した『I'll be there』です。相葉雅紀が主演を務めたフジテレビ系月9ドラマ『貴族探偵』の主題歌として書き下ろされた本作は、モータウンのバラードとは全く異なる、ビッグバンド・ジャズとファンクを融合させたスリリングなダンスナンバーでした。華麗でミステリアスな大人の色気を漂わせつつ、「真実を暴く場所へ必ず現れる」という探偵の矜持とファンへのメッセージを重ね合わせた構成が高く評価されました。
さらに記憶に新しいのが、BTSのJINがリリースしたソロ先行シングル『I'll Be There』です。ロカビリーやポップロックの軽快なドラムビートに乗せ、疲れ果てた日常を生きる人々やファン(ARMY)へ向けて「疲れたときは僕に寄り添ってほしい」と歌いかけるこの楽曲は、世界各国のiTunesチャートを席巻。ジャクソン5が提示した「寄り添い」の精神を、2026年代のメンタルヘルスやファンダム文化の文脈へと見事にアップデートさせました。