江戸の湯屋がどれほど活気に満ちていたかは、当時の文学や美術が雄弁に物語っている。戯作者の式亭三馬が著した滑稽本『浮世風呂』には、男湯や女湯で繰り広げられる他愛のない世間話、自慢話、愚痴が驚くほどリアルな方言とテンポで記録されている。読む者はまるで当時の湯上がりの2階広場にタイムスリップしたかのような錯覚を覚える。
一方で、歌川国貞などの絵師が描いた浮世絵には、湯上がりの女性が髪を整える艶やかな姿や、活気あふれる店内の様子が鮮やかに美しく描かれた。文字とビジュアルの両面から、銭湯が単なる洗浄の場を超えた総合エンターテインメント施設であったことが見て取れる。