キャリアを重ねるにつれ、彼女の真骨頂であるダークで知的なトーンはより深みを増している。その集大成の一つとも言えるのが、実在の事件に着想を得た主演映画『熱のあとに』だ。愛した男を殺そうとした過去を持つ主人公という、極めて複雑で危険な心理状態を抱える難役。彼女は過剰なドラマツルギーに頼ることなく、静かな狂気と剥き出しの孤独を見事に両立させた。
単なるスキャンダラスなサスペンス映画の枠に収まらず、濃密なヒューマンドラマへと昇華させたのは、彼女の徹底した役への没入と抑制の効いた演技プランに他ならない。愛とは何か、許しとは何かという普遍的な問いを、痛切な眼差し一つで観客に突きつける。自身のキャリアにおけるターニングポイントとして、国内外の批評家から絶賛を浴びたのも納得の仕上がりだ。