圧倒的な映像美を支えているのは、スクリーン上で鮮烈な異彩を放つ二人の名女優だ。工場で働く吃音の労働者イザベルを演じたイザベル・ユペールは、社会的抑圧に対するささやかな抵抗とピュアな情熱を見事に体現している。彼女の硬質で鋭い眼差しは、画面全体にピンと張り詰めた緊迫感を与える。
対するホテルの女主人はハンナ・シグラが演じた。ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督のミューズとしても知られる彼女は、大人の包容力とどこか退廃的な愛の気怠さを漂わせ、作品に深い陰影をもたらしている。対極にある二人の女性と監督との三角関係、そして資本家と労働者の対立軸が複雑に交錯し、一筋縄ではいかない多層的なドラマが立ち現れる。