ジブリ作品が世界中の映画ファンから愛される大きな要因の一つは、大人になってから鑑賞したときに初めて本当の重みが理解できるセリフが随所に散りばめられている点にあります。
『紅の豚』において、ライバルのカーチスから「ファシストにならねえと、豚になれねえのか」と煽られたポルコが返す「ファシストになるよりは豚のほうがマシさ」という返しは、国家や集団の狂気に呑まれることを拒絶する孤高の矜持を示しています。また、昔馴染みのジーナが夜の庭園で語る「ここでは時間がまるで止まっているみたい」というモノローグと、彼女を巡る男たちの切ない距離感は、人生の酸いも甘いも噛み分けた大人世代の琴線を強く揺さぶります。
『千と千尋の神隠し』では、千尋を乗せた海原電車の静けさの中で交わされる視線や、銭婆の温かいもてなしの言葉が印象的です。「お前を助けてあげたいけど、私にはどうすることもできないよ。お前の親のことや、カオナシのことや、ハクのことは、自分でどうにかするしかないんだ」という銭婆のセリフは、一見突き放しているようで、他者の人生を肩代わりすることはできないという大人の誠実な優しさを教えてくれます。