1997年の旧劇で「最低」のどん底に落ちた碇シンジの描写は、2026年に公開された『シン・エヴァンゲリオン劇場版』において見事な対比と精神的成長の伏線回収を果たしました。
『シン・エヴァ』の劇中、第3村で自暴自棄になっていたシンジは、仲間たちの温かな生活と時間に触れることでゆっくりと自我を回復していきます。そして最終決戦のクライマックス、精神世界の砂浜でアスカと再会したシンジは、かつてのように暴力や性的な依存に逃げることなく、「僕もアスカが好きだったよ」と過去の想いを穏やかに認めた上で、自立した一人の他者としてアスカを見送ります。
他者を傷つけ自らを「最低だ」と呪っていた少年が、痛みを引き受けて他者を尊重できる大人へと脱皮するまでの軌跡――。旧劇の病室シーンという絶対的な暗闇があったからこそ、『シン・エヴァ』で描かれたシンジの成熟と救済は、何層もの説得力を持って世界中のファンの胸を打つ結末となったのです。