耳の上の頭皮下には、下顎を引っ張り上げる扇状の大きな筋肉である側頭筋(そくとうきん)が広がっています。スマートフォンやPC画面を長時間凝視する生活スタイルが定着した結果、無意識の食いしばりや猫背による首肩の過緊張が連鎖し、この側頭筋が過度に硬直するケースが多発しています。 しかし、原因は筋肉だけに留まりません。日本頭痛学会の診療ガイドライン等でも指摘されている通り、頭蓋骨の表面を走る末梢神経の興奮や、血管炎、顎関節の不調などが複雑に関与しています。耳の上を押した際に痛みを生じさせる主な病態は、以下の5つに大別されます。
1. 側頭筋の過緊張(緊張型頭痛・筋筋膜性疼痛)
日常的なストレスや集中時の歯の接触癖(TCH:Tooth Contacting Habit)により、耳の上を押すと痛い側頭筋のトリガーポイントが形成されます。押すとズーンと重い鈍痛が広がるのが典型例です。
2. 末梢神経の過敏化(後頭神経痛・耳介側頭神経痛)
後頭部から側頭部へ向かう小後頭神経や大耳介神経、耳介側頭神経が締め付けられると、耳の上がピキピキと痛む神経痛が生じます。髪の毛に触れるだけでもピリッとした痛みが走ることが特徴です。
3. 顎関節の機能障害(顎関節症)
顎を動かす関節円板のズレや咀嚼筋の協調不全により、顎関節症から耳の上の痛みが放散痛として現れます。食事の際や口を大きく開けたときに痛みが連動します。
4. 血管の炎症や拡張(側頭動脈炎・偏頭痛)
耳の上を走行する浅側頭動脈が拡張すると、耳の上がズキズキと痛む原因となります。特に高齢者の自己免疫異常による側頭動脈炎は、緊急の治療を要する代表格です。
5. リンパ節や皮膚軟部組織の病変
頭皮の湿疹や耳周囲の感染症に伴い、耳の上周辺のリンパの腫れや痛みが生じるほか、皮下に角質が溜まる粉瘤(アテローム)が化膿している場合にも限局的な圧痛が現れます。