いま「書店・出版流通業界」ならびに「小売・リテール産業」全体は、かつてない構造転換の荒波に揉まれている。取次システムの再編、物流コストの高騰、電子コミックの急伸、さらには人口減少に伴う市場縮小。全国で街の書店が次々と姿を消していく厳しい現実がある。
その逆風のなかにあって、ジュンク堂書店 芦屋店が放つ存在感は、リアル店舗の生き残りモデルとして示唆に富んでいる。単にモノ(本)を売るだけの場所ではなく、「知的好奇心を刺激され、心が落ち着くサードプレイス」としての機能を果たしている点だ。
ECサイトでポチッと買えば翌日に届く利便性は確かにある。しかし、棚の前に立ち、活字の海に囲まれながら思考を巡らせる時間は、ネット通販では決して代替できない。小売・リテール産業が「体験価値」へのシフトを急ぐなか、芦屋店は知のインフラとしての公共性と商業性を高いレベルで両立させている。