双葉社から世に送り出された『レッドクローバー』や『あなたの右手は誰のもの』は、人間の深層心理に巣食う孤独や狂気を極限まで浮き彫りにした傑作だ。
『レッドクローバー』が描くのは、閉鎖的な土地に漂う不穏な空気と、過去の凄惨な事件に囚われ続ける人々の歪んだ執着である。美しくもどこか不吉な気配を漂わせる筆致は、読み進めるごとに読者の呼吸を奪っていく。信じていた足場が音を立てて崩れ去る感覚は、まさに圧巻の一言だ。
一方、『あなたの右手は誰のもの』では、自己のアイデンティティや家族という逃れられない檻をテーマに、研ぎ澄まされた心理サスペンスが展開される。身近にいるはずの家族が、まったく見知らぬ怪物に見えてくる瞬間。日常と異常の境界線がいかに曖昧であるかを、著者は残酷なまでのリアリティをもって突きつけてくる。