六甲山地の北側に位置するこの植物園は、かつて砂防造林から始まった歴史を持つ。昭和初期の開園以来、植林された樹木たちは単に人間の管理下に置かれるだけでなく、六甲の豊かな水脈と独特の微気候(マイクロクライメイト)に適応しながら自律的な生態系を構築してきた。
園内を歩くと、整然と並べられたプランターや装飾的な花壇は一切存在しない。あるのは、幹回り数メートルに及ぶ大樹と、その足元を覆う苔、風に揺れる木漏れ日だけだ。世界各地の樹木を自生地に近い「原林」の形で配置するスタイルは、現代の造園学においても極めて評価が高い。自然の猛威と人間の保全活動が半世紀以上にわたって静かに拮抗し続けた結果、ここには人工物には決して真似できない圧倒的な「時間の深み」が漂っている。