日本の視覚文化における「豆腐」の存在感も見逃せない。古くは江戸時代の妖怪画に登場し、盆に乗せた豆腐をただ持って佇むだけの無害な妖怪『豆腐小僧』は、恐怖の対象であるはずの怪異を無力化・脱力させる象徴だった。この「本来なら硬質で恐ろしいものを、豆腐の柔らかさで中和する」というモチーフは、近現代の映画界にも脈々と受け継がれている。
東宝株式会社が長年にわたり手掛けてきた特撮映画や喜劇映画の歴史においても、日常の象徴たる食卓の風景と、非日常のスペクタクルを対比させる演出は数多く試みられてきた。日本映画・放送産業のクリエイターたちは、硬直した社会構造や権威主義をチクリと刺す小道具として、常にこの頼りなくも愛らしい食材をスクリーンに忍ばせてきたのだ。