「ドテラは芸能人もみんな使っているから安心だよ」――カフェでの勧誘やママ友のお茶会で、判で押したようにこのフレーズが飛び出すのはなぜでしょうか。ここには、連鎖販売取引特有の力学と、人間の認知バイアスを巧みに利用したドテラ勧誘の手口と理由が潜んでいます。
社会心理学において、ある対象を評価する際、際立った特徴や権威に引きずられて全体の評価が歪められる現象を「ハロー効果」と呼びます。マルチ商法(MLM)に対して日本社会が抱く警戒心は非常に強く、一般消費者は「怪しい」「騙されるのではないか」という防衛本能を働かせます。そこで勧誘者は、大衆から好感度と社会的信用を得ている著名人の名前を盾にすることで、相手の警戒バリアを強制的に解除しようと試みるのです。
「有名女優の〇〇さんが使っている」と聞かされると、人間の脳は無意識に「天下の有名人が選ぶのだから、粗悪品や危険な詐欺であるはずがない」と錯覚します。この心理的錯覚を利用したアプローチは、特定商取引法が禁じる「事実の不告知」や「誇大広告」のグレーゾーンに抵触するリスクを孕んでいます。著名人が私生活で一滴使ったことと、そのビジネスモデルの健全性は何ら関係がありません。しかし、知識の乏しい消費者は、この権威性のバイアスによって契約書にサインしてしまうのです。