本作は、植村花菜の自伝的エッセイ『トイレの神様』(宝島社)をベースに構築されています。実際の体験談とドラマ版の構成を比較すると、ドキュメンタリーのような誠実さとテレビドラマならではの演出意図が見えてきます。
実話と完全に一致しているのは、「トイレ掃除の言い伝え」や「五円玉の手品」といった祖母との象徴的なエピソードです。和嘉さんが実際に口にしていた独特の教えや、孫への深い愛情は、原曲の歌詞に描かれた世界そのものでした。
一方で、約2時間のドラマとして起伏を持たせるため、一部の時系列や登場人物の配置にはドラマオリジナルの脚色が施されています。例えば、高校時代の反抗期の激しさや恋人との関係性、上京後の下積み生活における挫折のコントラストは、花菜が抱く「祖母への申し訳なさ」をより鮮明に浮き彫りにするための演出として強調されました。
病室での再会シーンにおいても、限られた尺の中で劇的なカタルシスを生み出す構成が取られていますが、根底にある「最後に感謝の歌を届けた」という本質的な事実は、植村花菜自身の人生の歩みそのものです。