大ヒットシングル『修羅場』の華々しい表題曲の陰で、ひそやかに、しかし決定的な熱量をもって録音されたのが『落日』である。当時のバンド内部は、第一期メンバーの離脱という大きな転換期を迎えていた。キーボードのH ZETT M(ヒイズミマサユ機)とギターのヒラマミキオの去り際、そして新たな血を迎える直前の繊細な空気が、スタジオの空間には満ちていたという。
所属事務所である黒猫堂やレーベルのユニバーサルミュージックの関係者が後に明かしたエピソードによれば、この楽曲のレコーディングは緊張感と慈愛が入り混じる特殊な雰囲気の中で行われた。椎名林檎がピアノに向かい、一音一音を確かめるように紡ぎ出した旋律は、単なるお別れの曲を超え、バンドという共同体が辿る運命そのものを捉えていたのである。