2002年のセレクトセール当歳セッションにおいて、金子氏がディープインパクト(母ウインドインハーヘアの2002)を競り落とした金額は7000万円。当時の相場からすれば決して突出した高額取引ではなかった。むしろ、当時はやや小柄で見栄えのしない当歳馬に見向きもしなかったバイヤーが多かったなかで、金子氏はその澄んだ瞳と独特のバランスに目を留めたという。
生産牧場であるノーザンファームのスタッフすら驚嘆させたのは、血統表の字面だけに頼らない、馬そのものが発するエネルギーを捉える天性の直感だ。踏み込みの柔らかさ、筋肉の付き方、そして何よりも馬の「気性」の芯を見極める観察眼。徹底したリスク管理と勝負どころでの冷徹な決断力という、実業家としての研ぎ澄まされた嗅覚が、サラブレッドビジネスという不確実性の極致で見事に結実した瞬間だった。