多くの人々が恋愛ドラマの用語として親しんでいるこの言葉だが、そのルーツは思わぬ場所にある。本来、発祥となったのは競馬の生産現場だ。競走馬の繁殖において、貴重な種牡馬が牝馬(ひんば)から蹴られて怪我を負うのを防ぐため、事前に牝馬の発情状態を確認し、ムードを高める役割を担わされる馬のことである。
用が済めば交配直前に本命の種牡馬と交代させられ、自らは報われることがない。このあまりにも切なく理不尽な競馬における役割が、のちに物語表現へと転用され、本心ではヒロインを愛しながらも結ばれずに身を引く不憫なキャラクターの代名詞へと昇華した。言葉の背景にある哀愁と自己犠牲のニュアンスこそが、現在のドラマ文化にも脈々と受け継がれている。