大正10年という時代を紐解くと、第一次世界大戦後の国際秩序再編と、日本国内における「大正デモクラシー」の隆盛が交錯した激動の年であったことが分かります。当時の報道各社の資料や公文書記録によると、国内外で近代日本の命運を左右する歴史的事件が相次ぎました。
国内では、平民宰相として国民的な人気を集めた原敬首相が東京駅で暗殺される凶変が発生。社会不安が高まる一方で、皇太子裕仁親王(後の昭和天皇)の欧州歴訪が実現し、日本が近代国家として国際協調路線を模索した時期でもありました。外交面ではワシントン海軍軍縮会議が開催され、主力艦の保有比率を巡る国際交渉が行われています。
文化・市民生活に目を向けると、西洋のモダンなライフスタイルが都市部へ浸透し始めたのもこの時代です。路面電車網の発達やカフェ文化の定着、大衆雑誌の創刊ラッシュなど、大正ロマンの香りが色濃く漂う自由闊達な空気が広がっていました。大正10年生まれの方々は、その後の世界恐慌や昭和の戦争、戦後の高度経済成長という、日本の劇的な変遷をその身をもって体験してきた世代です。