実写映画化にあたり、主人公の青年役を託されたのが実力派俳優の神尾楓珠だった。実在の人物、それも関係者が今も深い愛情を抱き続ける存在を演じるプレッシャーは並大抵のものではなかったはずだ。神尾はトロンボーンの演奏を一から猛特訓し、実際の顧問教諭や家族と対話を重ねながら、役の心臓部へと潜り込んでいった。
スクリーンに映し出されたのは、単なる演技を超えた真に迫る表情だった。仲間と音楽を創り上げる歓喜の笑顔、病魔に対するやるせなさ、そして何より市立船橋高校吹奏楽部という強固なコミュニティが持つ独特の連帯感。名門吹奏楽部が掲げる「音をひとつにする」という精神が、演者たちの肉体を通して見事にスクリーンへ移植されていた。