街を歩くと目につくのは、看板に躍る「料理旅館」「料亭」の文字だ。風俗営業法上の性風俗店ではなく、名目上は飲食を提供する「料亭・特殊飲食店業」として営業を継続している。客と仲居(女性)が店内で「自由恋愛」に発展した結果として行為が行われるという法解釈に基づき、街全体が行政組織である「飛田料理組合」の自主規制のもとで統制されてきた。
この特異なあり方は、建築史家であり風俗研究でも知られる井上章一が著書で指摘したように、日本の近代風俗史における法規制と都市空間のせめぎ合いが生んだ妥協の産物でもある。映画『難波金融伝 ミナミの帝王』などの映像作品でも幾度となくアンダーグラウンドの象徴として描かれてきたが、単なる無法地帯ではない。強固な秩序と伝統的な互助精神に支えられた、きわめて日本的なグレーゾーンの結晶なのだ。