歴史の針を過去へ戻すと、用語を巡る情勢はさらに複雑な色合いを帯びる。李氏朝鮮時代や日本統治時代において、「朝鮮」という地名は地域全体を包括する不変の呼称であった。しかし、第二次世界大戦後の南北分断と朝鮮戦争の勃発が、言葉が持つ意味を決定的に切り裂いたのだ。
米ソ冷戦の最前線となった半島では、南北双方が「自国こそが半島全域を代表する唯一の正統政府である」と強く主張し合った。その結果、政治的主張が地理的な呼称そのものをジャックする事態が生じた。南側が「韓国」という称呼を定着させたことで、北側を指す「北朝鮮」という言葉は、単なる方角を示す記号を超えて、特定の政治体制に対する警戒や区別を込めた呼称へと変容していった。