日本のポップカルチャーにおいて「愛人」というモチーフを決定的に印象づけたのが、アジアン・ポップスの歌姫テレサ・テンが1985年にリリースした大ヒット曲、『愛人』(テレサ・テンの楽曲)である。切ないメロディに乗せて語られる女性の哀愁と切望は、日本中を魅了した。
この楽曲で歌われる世界観は、単なる道徳的な非難の対象としての愛人ではなく、どうしても断ち切れない感情の痛切さを描いている。歌詞に込められた圧倒的な説得力は、当時の社会情勢や人々の寂しさと共鳴し、時代を超えて語り継がれる名曲となった。昭和から平成へと続く歌謡曲の歴史において、愛という普遍的なテーマが持つ影の部分をアートの域まで高めた金字塔と言えるだろう。