映画を語る言葉の歴史を振り返るとき、ピュリツァー賞を受賞した伝説的評論家ロジャー・イーバートの名を避けて通ることはできない。彼は平易かつ情熱的な言葉で映画の喜びを大衆に開放し、サムズアップ(親指を立てるサイン)ひとつで映画の見方をアップデートしてみせた。専門用語に逃げず、一個の人間としてスクリーンと対峙する彼の姿勢は、今なお批評の黄金律として輝いている。
日本においてその系譜を独自に進化させ、熱狂的な支持を集め続けているのが町山智浩だ。アメリカ社会の深層、政治的背景、映画作家の偏執的なこだわりを鮮やかに接続する彼の語り口は、難解なアートフィルムから大衆作まで、作品の真価を浮き彫りにする。国境や言語を超え、時代を捉える確かなレンズを持つ書き手たちによって、映画批評は単なる感想文から「時代を読み解く文化批評」へと昇華されるのだ。