四海樓の歴史を語る上で絶対に外せない人物が、創業者である福建省出身の陳平順だ。明治時代、長崎に渡ってきた彼は、生活に苦しむ同郷の留学生や庶民に「安くて栄養価が高く、お腹いっぱいになる料理を食べさせたい」という深い思いを抱いた。そこで近海の魚介類や地元の野菜、豚肉を炒め、白濁した濃厚なスープで煮込む独自の一品を生み出した。
これがまさに「元祖長崎ちゃんぽん」の始まりである。「ちゃんぽん」という独特の名称も、福建語の挨拶である「喰飯(シャポン)」が訛ったものという説が有力だ。一杯の丼に込められた創業者の慈悲の心と情熱は、時を経ても褪せることなく、長崎の食文化の根幹として息づいている。