日本の死因究明制度を語る上で欠かせないのが、元東京都監察医務院長である上野正彦氏の存在だ。ミリオンセラーとなった名著『死体は語る』で記された「死者の人権を守る」という哲学は、現代の法医学界および警察組織のDNAとして脈々と受け継がれている。
東京都監察医務院をはじめとする専門機関と警察組織の連携は、死因究明の命綱だ。犯罪死だけでなく、公衆衛生上の危機や突発的な事故死の真相を解明する行政解剖の現場では、法医学者がメスを握る前に警察側との綿密な情報共有が行われる。生前の健康状態や生活歴、現場の状況を突き合わせることで、死者が遺した無言の叫びを医学的・法的な真実へと昇華させていく。