本作の圧倒的なリアリティと哀愁を支えたのは、主演を務めた田口トモロヲの名演に他ならない。関係者の証言によると、撮影現場では実際の植物の成長速度や状態に合わせた臨機応変なスケジュール調整が行われていたという。CGや小道具だけに頼らず、本物の植物が持つ「生気」や「衰え」をカメラに収めるため、スタッフ陣は日々植物のコンディションと向き合っていた。
また、田口トモロヲが演じる主人公のモノローグ撮影では、NGを恐れずその場の空気感や即興のニュアンスを重視する手法がとられた。ベランダという狭小なロケーションでの長回し撮影は、キャストとスタッフ双方に高度な緊張感を強めたが、それが結果として主人公の孤独と植物への偏執的な愛を見事に浮かび上がらせたのだという。こうした知られざる現場の情熱が、作品に深みを与えていた。