伝統芸能において「老い」と「身体美」をいかに調和させるかは永遠の課題です。歌舞伎の女方は、年齢を重ねることで内面の情念や品格を深めていく芸系ですが、『鷺娘』のような純粋舞踊劇においては、肉体そのものの俊敏性や透明感が極めてシビアに問われます。
心理学や舞台芸術論の観点から見れば、玉三郎の決断は「芸術的ペルソナ(演者のイメージ)の純度を永遠に保存するための賢明な自己規律」と言えます。未練を残して質を落とすことなく、絶頂期の記憶を観客に刻み込むことで、作品自体を神話へと昇華させました。
【鑑賞の判断基準】シネマ歌舞伎・映像ソフトをおすすめできる人・慎重になるべき人
- 強くおすすめできる人:
- 歌舞伎初心者で、まずは「圧倒的なビジュアルの美しさ」「様式美」を体感したい人
- 女方の所作、衣装の色彩美、舞台美術の極致をHD高画質のカメラワークで細部まで観たい人
- バレエ、フィギュアスケート、現代演劇など、身体表現の最高峰に興味がある人
- 慎重に検討すべき人:
- セリフ劇やドラマ性の強いストーリー展開(人間関係の複雑な愛憎劇)を主目的に求めている人(※本作は舞踊劇のため、セリフはほぼなく長唄と踊りで表現されます)
- 「生の劇場空間でしか感動できない」という強いこだわりを持つ人