この難解極まりない原作を映像化するという無謀な挑戦を成功させたのが、アニメーション制作を担当した株式会社シャフトだ。新房昭之監督をはじめとするクリエイター陣が仕掛けた演出のアプローチは、当時のアニメ界の常識を鮮やかに打ち破った。
画面いっぱいに表示される黒コマ・赤コマのテキスト、実写写真の挿入、極端な遠近法と幾何学的な背景デザイン。作画の省力化テクニックと見なされがちだった手法を、洗練されたアバンギャルドな芸術スタイルへと変幻自在に転換してみせた。この革新的なビジュアル表現の裏側には、限界まで研ぎ澄まされた演出家の狂気的なこだわりと、膨大な言葉の情報を一瞬で脳に届けるための計算し尽くされた戦略が存在していたのだ。